超音波と水の微小液滴でリグニンを有用分子に、触媒も加熱も使わず20分
米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のホアキン・ロドリゲス=ロペス教授らの研究グループが、製紙の副産物であるクラフトリグニンを、酸化還元活性を持つ低分子「SEMILL-A」に変える手法を報告した。油と水を超音波で乳化させた微小液滴を使う。この液滴が活性酸素種を生み出すため、外部の触媒も加熱も必要ない。用いるのは油、水、リグニン、酸だけで、室温・20分で約56%が目的物に変換された。クラフトリグニンはパルプ・製紙の副産物として年5000万トン超が発生する。成果は学術誌Smallに掲載された。
この記事の要点
- クラフトリグニンはパルプ・製紙の副産物として年5000万トン超が発生する
- 油と水を超音波で乳化させた微小液滴が活性酸素種を生み、触媒なしで反応が進む
- 室温・20分で約56%が目的物SEMILL-Aに変換された
- 従来の熱化学的・電気化学的手法は触媒と厳しい条件を要し、転化率も低かった
- 電池用途に使えるかは未確定で、分子の選択性の最適化が今後の課題として残る
木材からパルプを取り出すとき、繊維をつなぎとめていたリグニンは邪魔者として分離される。クラフト法で出るこのクラフトリグニンは、パルプ・製紙の副産物として年5000万トンを超える量が生じる。多くは工場のボイラー燃料として燃やされる。分子としては芳香環を豊富に含み、化学品の原料になりうる素性を持つが、構造が複雑で不揃いなため、狙った分子に変えるのが難しい。
米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のホアキン・ロドリゲス=ロペス教授と大学院生のスプリヤ・ダス氏らの研究グループは、このリグニンを酸化還元活性のある低分子に変える手法を報告した。生成物は「SEMILL-A」と名付けられている。
使うのは、油と水を超音波で乳化させた微小液滴である。液滴の界面では活性酸素種が生じ、これがリグニンを切断する働きをする。外部から触媒を加える必要がなく、加熱も要らない。実際に必要な材料は油、水、リグニン、酸の4つだけで、反応は室温、20分で終わる。この条件で約56%が目的物に変換された。
従来、リグニンを分解する手法は熱化学的なものか電気化学的なものが中心で、いずれも触媒と厳しい反応条件を要したうえ、転化率も今回より低かった。装置と条件の簡素さが、この報告の要点にあたる。
一方で用途は定まっていない。研究グループは、SEMILL-Aを電池の材料として使えるかどうかは不確かだとしている。今後は分子の選択性を高める最適化と、リグニン以外の生体高分子にこの手法が使えるかの検証を進めるという。共同研究にはジェフリー・ムーア氏、ジョナサン・スウィードラー氏、チャールズ・シュローダー氏、アルゴンヌ国立研究所が加わった。成果は学術誌Smallに掲載された(DOI 10.1002/smll.74934)。
| 主体 | イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(大学・研究機関) |
|---|---|
| 情報の種類 | 研究発表 |
| 本サイト掲載日 | 2026年9月7日 |
| 地域 | 海外(US) |
| 公開日 | 2026年9月 のアーカイブ |