植物廃材のリグニンを穏やかな条件で芳香族化合物へ、単原子触媒の作用点を特定
英マンチェスター大学の研究グループが、植物廃材に含まれるリグニンをフェノールなどの芳香族化合物へ変換する単原子触媒を開発した。窒素をドープした炭素材料にルテニウム原子を埋め込んだもので、厳しい薬品を使わない穏やかな条件で反応が進む。使う金属の量がごくわずかで済むため、従来の触媒系より効率がよい。成果は学術誌ACS Catalysisに掲載された。
この記事の要点
- リグニンは林業や農業から出る廃棄バイオマスの最大35%を占める
- 反応の要はRu-N4サイトで、酸素を活性化して炭素-酸素結合と炭素-炭素結合の切断を引き起こす
- モデル化合物ではほぼ全量が変換され、複数の由来のリグニン試料でも芳香族化合物への変換を確認した
- 研究グループは、再生可能な資源を高付加価値の化学品に変える触媒設計の指針になるとしている
リグニンは木質や農業残渣に含まれる高分子で、廃棄バイオマスの最大35%を占める。芳香環を骨格に持つため、化学品の原料としては本来価値が高い。ただし構造が複雑で結合が強く、目的の化合物だけを取り出すには厳しい反応条件や大量の触媒が必要になり、その費用が実用化を阻んできた。
マンチェスター大学の研究グループが用いたのは単原子触媒である。窒素をドープした炭素材料の中にルテニウム原子を一つずつ分散させて埋め込む構造で、金属をまとめて使う従来の触媒に比べて必要量が大幅に少なくて済む。反応も比較的穏やかな条件で進み、強い薬品を使わない。
研究の核心は、どの原子配置が反応を担っているかを特定した点にある。ルテニウム原子が4つの窒素原子と結びついた「Ru-N4サイト」が酸素を活性化し、リグニンの炭素-酸素結合と炭素-炭素結合の切断を引き起こす。この対応関係が分かれば、触媒の設計を当てずっぽうではなく狙って進められる。
性能面では、モデルとなるリグニン化合物のほぼ全量を変換し、フェノールを含む芳香族化合物を高い収率で得た。さらに複数の由来のリグニン試料についても、実際に芳香族化合物へ変換できることを確かめている。成果は学術誌ACS Catalysisに掲載された。研究グループは、この知見が再生可能な資源から高付加価値の化学品をつくる触媒系の開発につながるとしている。
| 主体 | マンチェスター大学(University of Manchester)(大学・研究機関) |
|---|---|
| 情報の種類 | 研究発表 |
| 本サイト掲載日 | 2026年8月26日 |
| 地域 | 海外(GB) |
| 公開日 | 2026年8月 のアーカイブ |