発酵工場の排水から窒素を回収、産総研らが溶存酸素を絞る運転条件を見いだす
産業技術総合研究所がキリンホールディングス、東京農工大学、京都大学と共同で、発酵産業の排水に含まれる窒素をアンモニウムイオンとして回収する道筋を示した。活性汚泥を低い溶存酸素と低いpHの条件に置くと、微生物群の働きが窒素の除去から回収へ傾き、窒素ガスまで分解が進まずアンモニウムイオンの段階で止まる。成果は学術誌Water Researchに掲載された。
この記事の要点
- 従来の排水処理は窒素を窒素ガスに変えて捨てており、そのための曝気に電力を要していた
- 回収に切り替えれば曝気の負荷が下がり、窒素をエネルギー資源として再利用できる
- 既存の処理設備に大きな改造を加えずに適用できる点を利点として挙げている
- 研究グループは制御技術が未確立であるとし、後段の分離・濃縮技術が必要としている
- 論文はDOI 10.1016/j.watres.2026.126305で公開されている
排水に含まれる窒素は、これまで「取り除くもの」として扱われてきた。活性汚泥を使う一般的な処理では、微生物の働きで窒素化合物を段階的に分解し、最終的に窒素ガスとして大気へ逃がす。この過程には空気を送り込む曝気が欠かせず、処理場の電力消費の大きな部分を占めてきた。
産業技術総合研究所の籾内健吾氏らの研究グループが着目したのは、この分解を途中で止められないかという点である。キリンホールディングス、東京農工大学、京都大学と共同で進めた研究では、活性汚泥を低い溶存酸素と低いpHの条件下に置いた。すると汚泥中の微生物群の構成が変化し、窒素を除去する経路ではなく回収する経路へ傾く。分解はアンモニウムイオンの段階で止まり、窒素ガスまで進まない。
対象としたのは、発酵産業から出る低濃度の窒素化合物を含む排水である。研究グループはこの運転条件を「微好気活性汚泥法」と呼んでいる。曝気を抑えられるぶん処理に要する電力が下がり、取り出した窒素はエネルギー資源として再利用できる。既存の処理設備に大きな改造を加えずに適用できる点も挙げられている。
一方で、実用化に向けた条件は残る。研究グループは、この状態を安定して維持する制御技術がまだ確立していないとしており、回収したアンモニウムイオンを取り出すための分離・濃縮技術も別途必要になる。記事の範囲では転換率や選択率といった定量的な性能値は示されていない。成果は学術誌Water Researchに掲載された。
| 主体 | 産業技術総合研究所(AIST)(大学・研究機関) |
|---|---|
| 情報の種類 | 研究発表 |
| 本サイト掲載日 | 2026年8月27日 |
| 地域 | 日本 |
| 公開日 | 2026年8月 のアーカイブ |