分解できないとされた車・建材向け樹脂を溶かす、繊維も無傷で回収
米テキサス大学オースティン校のザック・ペイジ准教授らとサンディア国立研究所の研究グループが、ポリジシクロペンタジエン(pDCPD)を分解して再利用できる材料に戻す手法を報告した。pDCPDは車両や建材に使われる樹脂で、熱力学的に安定しすぎて分解できないと考えられてきた。使用済みの製品は焼却されるのが通例で、多くのエネルギーを要し、有害な副生成物が出るうえ、中の繊維も劣化する。新しい手法では、環境負荷の低い溶媒とルテニウムを含む触媒の溶液に製品を入れて撹拌する。大きさに応じて数時間から数日で、再利用できるポリマー粉末と、損傷のない炭素繊維またはガラス繊維が得られる。
この記事の要点
- 対象は車両や建材に使われるポリジシクロペンタジエン(pDCPD)
- 熱力学的に安定しすぎて分解できないと考えられ、焼却されるのが通例だった
- 環境負荷の低い溶媒とルテニウムを含む触媒の溶液に入れて撹拌する
- 大きさに応じて数時間から数日で、ポリマー粉末と無傷の繊維が得られる
- ルテニウム触媒を回収・再利用できるかが最大の課題として残っている
ポリジシクロペンタジエン(pDCPD)は、車両の外装部品や建材に使われる樹脂である。丈夫で衝撃に強く、繊維で補強して構造材としても使う。その丈夫さが処理の段では裏目に出る。この材料は長く存在してきたが、熱力学的に安定しすぎていて分解できない、というのが通説だった。
結果として使用済みの製品は焼却に回る。焼却には多くのエネルギーが要り、有害な副生成物が出る。さらに、中に入っている炭素繊維やガラス繊維も熱で劣化する。繊維は製造にエネルギーを要する高価な材料なので、これが失われる損失も小さくない。
米テキサス大学オースティン校のザック・ペイジ准教授と大学院生のケルディ・メイソン氏、サンディア国立研究所の研究グループが報告したのは、この樹脂を溶かして戻す手法である。環境負荷の低い溶媒とルテニウムを含む触媒の溶液に製品を入れ、撹拌する。それだけで分解が進む。
要する時間は製品の大きさ次第で、数時間から数日の幅がある。得られるのは再利用できるポリマー粉末と、損傷のない炭素繊維またはガラス繊維である。繊維が無傷で出てくる点が、焼却との決定的な違いになる。樹脂と繊維を分けて両方を回収できれば、複合材のリサイクルとして筋が通る。
一方で、実用に向けた最大の問いも示されている。ルテニウム触媒を回収して再利用できるかどうかである。ルテニウムは白金族の希少金属で高価なため、使い捨てにすると工程全体の採算と持続可能性が成り立たない。この点が残る限り、規模を広げる話には進みにくい。
なお、記事の範囲では収率や純度、反応温度、焼却と比べた廃棄物量の具体的な数値は示されていない。成果は学術誌Science Advancesに掲載された(DOI 10.1126/sciadv.aef4204)。
| 主体 | テキサス大学オースティン校(大学・研究機関) |
|---|---|
| 情報の種類 | 研究発表 |
| 本サイト掲載日 | 2026年9月16日 |
| 地域 | 海外(US) |
| 公開日 | 2026年9月 のアーカイブ |