難燃剤入りEV用複合材をリサイクル可能に、韓国KRICTが添加剤の9割超を除去
韓国化学研究院(KRICT)のキム・ジンチョル博士らの研究グループが、これまで再生できなかった難燃性の繊維強化複合材をリサイクル可能にする手法を開発した。高密度ポリエチレン(HDPE)の繊維とフィルムを積層し、低分子量のポリオレフィン系添加剤を加える構成である。この添加剤が繊維とフィルムの接着を高め、難燃剤を均一に分散させ、さらにリサイクル時には自身が除去されやすい。層間の接着力は約40%向上し、難燃剤40重量%の配合でUL94 V-0の難燃等級を満たした。添加剤は90%以上を除去でき、回収した再生材はバージン材と同等の色と強度を示したという。
この記事の要点
- 熱硬化性の繊維強化複合材は硬化後に再溶融できず、埋立か焼却しか処理の選択肢がなかった
- HDPEの繊維とフィルムを積層した自己強化型複合材で、母材と繊維を同じ樹脂に統一している
- 層間の接着力は約40%向上し、難燃剤40重量%の配合でUL94 V-0の難燃等級を満たした
- 添加した低分子量ポリオレフィンは90%以上を除去でき、再生材はバージン材と同等の色と強度だった
- 繰り返しリサイクルした際に難燃剤が蓄積する問題は今後の課題として残っている
電気自動車の部材には軽さと難燃性の両方が求められる。バッテリー周りの部品には燃え広がりにくさが要るし、車体が重くなれば航続距離が落ちる。この二つを満たすために繊維強化複合材に難燃剤を混ぜたものが使われてきたが、処理の段になると困る。熱硬化性の複合材は一度固まると加熱しても溶けず、埋め立てるか燃やすかしかない。
韓国化学研究院(KRICT)のキム・ジンチョル博士、チョン・ジウン博士、チン・ヨンジェ博士らの研究グループは、この構造を組み替えた。使ったのは高密度ポリエチレン(HDPE)の繊維とフィルムを積み重ねる自己強化型複合材である。繊維も母材も同じ樹脂なので、原理的には全体を溶かして再生できる。
問題は、同じ樹脂どうしだと層の接着が弱いことと、難燃剤が偏りやすいことだった。研究グループは低分子量のポリオレフィン系添加剤を加えることで、この二つに同時に対処している。添加剤は繊維とフィルムの界面になじんで接着力を上げ、難燃剤を均一に分散させる。層間の接着力は約40%向上した。
難燃性については、難燃剤を40重量%配合した状態でUL94のV-0等級を満たした。垂直に保持した試験片が、着火後に規定時間内で自己消火し、滴下物で下の綿を燃やさない水準である。
この添加剤は、リサイクルの段階では取り除きやすいように設計されている。研究グループが使った添加剤の90%以上を除去でき、回収した再生材はバージン材と同等の色と強度を示したという。色が戻るという点は、再生材が用途を選ばずに済むかどうかに関わる。
課題も挙げられている。産業用途に向けた追加の難燃性試験が必要であること、繰り返しリサイクルする過程で難燃剤が蓄積する問題を防ぐ研究が要ること、の二点である。研究グループは企業との協業で実用化を進めるとしている。成果は学術誌Composites Part B: Engineeringに掲載された。
| 主体 | 韓国化学研究院(KRICT)(大学・研究機関) |
|---|---|
| 情報の種類 | 研究発表 |
| 本サイト掲載日 | 2026年9月1日 |
| 地域 | 海外(KR) |
| 公開日 | 2026年8月 のアーカイブ |