安価な青色顔料でCO2を一段でメタンに、ファラデー効率79.5%
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の藪浩教授らの研究グループが、銅フタロシアニンを触媒に使い、二酸化炭素を一段の電気化学反応でメタンに変換する手法を報告した。銅フタロシアニンは青色顔料として広く使われる、安価で入手しやすい化合物である。ファラデー効率は最大79.5%、電流密度は最大575mA/cm²に達した。150mA/cm²の条件では、メタン選択性60%超を約80時間維持している。生成物が複数混ざりやすい従来の銅ナノ粒子触媒に対し、長時間の運転で安定した性能を示したとしている。北海道大学とスタートアップのAZUL Energyとの共同研究で、成果は学術誌Smallに掲載された。
この記事の要点
- 触媒は青色顔料として広く使われる銅フタロシアニンで、安価かつ入手しやすい
- 二酸化炭素を一段の電気化学反応で直接メタンに変換する
- ファラデー効率は最大79.5%、電流密度は最大575mA/cm²に達した
- 150mA/cm²の条件でメタン選択性60%超を約80時間維持した
- 実用条件下での性能確認には、触媒と電解槽システムの開発が引き続き必要としている
二酸化炭素を電気で還元して燃料に戻す研究では、銅が長く主役だった。炭素どうしをつなぐ働きを持つ数少ない金属だからである。ただし銅には難点がある。反応が一つの生成物に収束せず、メタン、エチレン、エタノール、一酸化炭素などが混ざって出てしまう。分離の手間が増えれば、その分だけ実用から遠のく。
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の藪浩教授らの研究グループが選んだのは、銅フタロシアニンである。青色顔料として印刷インキや塗料に広く使われている化合物で、安価かつ入手しやすい。銅原子が有機分子の環に組み込まれた構造を持ち、金属としての銅とは反応の挙動が異なる。
報告された性能は次のとおりである。ファラデー効率は最大79.5%に達した。流した電子のうち約8割がメタンの生成に使われた計算になる。電流密度は最大575mA/cm²で、これは単位面積あたりの処理量にあたる。150mA/cm²の条件では、メタン選択性60%超を約80時間維持した。
数値のうち実用性を測るうえで重いのは、最後の80時間である。触媒は運転を続けるうちに劣化するのが通例で、初期性能の高さだけでは判断できない。研究グループは、生成物が混ざりやすい従来の銅ナノ粒子触媒に比べ、長時間運転で安定していた点を成果として挙げている。
用途の側から見ると、メタンは既存の都市ガス網やLNGの設備がそのまま使える点に利がある。回収したCO2をメタンに変えれば、既存インフラに乗せられる。研究グループは今後、産業排ガスから回収したCO2や大気直接回収(DAC)で得たCO2を使った試験を予定している。実用条件下での性能を見極めるには、触媒と電解槽システムのさらなる開発が必要だとしている。
北海道大学およびスタートアップのAZUL Energyとの共同研究で、成果は学術誌Smallに掲載された(DOI 10.1002/smll.75041)。
| 主体 | 東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)(大学・研究機関) |
|---|---|
| 情報の種類 | 研究発表 |
| 本サイト掲載日 | 2026年9月8日 |
| 地域 | 日本 |
| 公開日 | 2026年9月 のアーカイブ |